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『最終上映』
> 石黒達昌著/木村繁之装画
> ISBN 4-8288-2372-7
> 福武書店
> 1262円
> 1991.3.15発行
収録作:
「最終上映」「ステージ」が収録された処女作品集。
「最終上映」は学生時代の友人の、「ステージ」は恋人でもある同僚の女医の、癌との闘いを淡々と描いて感動を呼ぶ。「最終上映」は第八回海燕新人文学賞受賞作品。

『平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士,並びに,』
> 石黒達昌著/菊池信義装幀
> ISBN 4-8288-1738-7
> 福武書店
> 1456円
> 1994.5.16発行
収録作:
「平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに,」
「鬼ごっこ」「今年の夏は雨の日が多くて、」
 表題作は、第百十回芥川賞候補作。北海道・神居古潭にのみ生息していた希少種、ハネネズミの生態と絶滅の顛末を描いた、写真・図版・データを交えてのあっと驚く横書き論文形式。論文なのになぜか感動を生むという著者の力量が現れた傑作。遺伝とか生殖とか種とは何かについて考えさせられ、SF的視点を持った作品だと思います。
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『94627』
> 石黒達昌著/菊池信義装丁
> ISBN 4-8288-2512-6
> ベネッセコーポレーション
> 1456円
> 1995.8.10発行
収録作:
「イスラム教の信者、ユダヤ教の信者、キリスト教徒など、神と終末の日とを信じ善を行う者は、その主のみもとに報酬がある。彼らには恐れも悲しみもない」
 湾岸戦争直前、米軍の情報工作に携わった日本人傭兵、「ジョーイ」の活動を追った怪作(誉めてるんです)。日本の現状を揶揄した展開は、若き日の筒井康隆を彷彿させます。
「94627」
 サリン事件を題材に証言集の形を取った短篇。SFファンには、ハインラインの“危険な兵器というものは存在しない。危険なのは人間だけだ”(うろ覚え^^;)という言葉を思い出すでしょう。
「ALICE」
 バラードのコンデンスノベルを思わせる報告書形式の作品。殺人事件の当事者たちが多重人格者(?)なようなので、目眩のするような構成。実験作かなぁ。

『新化』
> 石黒達昌著/菊池信義装丁
> ISBN 4-8288-2527-4
> ベネッセコーポレーション
> 1456円
> 1997.1.10発行
収録作:
「新化」
 「平成3年5月…」の続編。ハネネズミ絶滅から3年後、残された臓器標本を分析した論文が発表される。著者の石井晶は、行方知れずとなったハネネズミ研究者の甥であった。石井は、ハネネズミが生息していた神居古潭で、ハネネズミと遺伝子型が極めて近いエンジェル・マウスを発見しハネネズミ再生の試みが始まる……
「カミラ蜂との七十三日」
 会社員が、ある日突然、蜂につきまとわれる。その蜂は、猛毒を持った北欧起源のカミラ蜂。何故男につきまとうのかはよく分からないけど不思議な雰囲気をもった作品。
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『新化』
> 石黒達昌著/芦澤泰偉装丁
> ISBN 4-89456-626-5
> 角川春樹事務所
> 580円
> 2000.1.18発行
収録作:
「平成3年5月2日……」と「新化」の単行本収録の二作品を全面改稿し、まとめたもの。
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『人喰い病』
> 石黒達昌著/芦澤泰偉装幀
> ISBN 4-89456-767-9
> ハルキ文庫
> 540円
> 2000.10.18発行
収録作:
「雪女」
 旧陸軍資料から発見された低体温症の女性・ユキについての報告書。ファーマーの「恋人たち」を彷彿とさせる悲恋が医学的見地から淡々と語られる。
「人喰い病」
 北海道の過疎地で、小さな潰瘍から短期間で死に至る奇病が発生する。原因となるウイルスは見つからず、この病気は「人喰い病」と呼ばれるようになった……
「水蛇」
 山歩きで道に迷った男が避難した鍾乳洞で見つけた水蛇の生態を描いた短篇。石黒さんは、こうした架空の生物のリアリティ溢れる描写が上手い。クラークの「メデューサとの出会い」に匹敵すると言っても誉めすぎではないと思う。今度は宇宙生命体に挑戦して欲しいなあ。
「蜂」
 「カミラ蜂との七十三日」を一人称で書き直したもの。

『冬至草』
> 石黒達昌著/鈴木康士カバー
> ISBN 4-15-208735-8
> ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
> 1600円
> 2006.6.30発行
収録作:
「希望ホヤ」
 弁護士ダンは、娘のリンダが小児癌で余命半年で、主治医からも匙を投げられたため自分が治してやるしかないと決意する。ある日一家は、表面に悪性肉腫ができているにも関わらずしっかり生きている珍味“希望ホヤ”の存在を知る。
「冬至草」
 北海道・旭川の郷土図書館で見つかった新種の植物“冬至草”の押し葉。やがて太平洋戦争期の在野研究者が遺した記録から、ウランを含んだ土壌に生息して人間の血液を養分とする異様な生態が明らかになっていく……
「月の…」
 右の手のひらに月が見えるようになった男の幻想譚。
「デ・ムーア事件」
 アメリカ人女性が「火の玉につきまとわれる」と訴えた後自殺してしまうという事件。似たような他の事件に共通するジェーン・デ・ムーアという化学技官の実験が関与している可能性が明らかになるのだが……
「目をとじるまでの短かい間」
 芥川賞候補作。
 北海道の田舎の父親がやっていた病院に都落ちしてきた外科医と幼い娘。妻は癌に冒されたため主人公は新薬を投与したが亡くなってしまい、そのデータを製薬会社は欲しがっているが彼は断固拒否している。末期癌の患者や日々の患者に追われている外科医の日常が描かれた内宇宙を追求したと思える作品。
「アブサルティに関する評伝」
 若き研究者アブサルティは、細胞死のメカニズムに関する画期的な理論を発表した。しかし同僚が、その論文のデータが、結果から推測した「捏造」であることに気づく。
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